附属病院長インタビュー ~男女共同参画を語る~

とき
平成29年5月10日(水)
場所
荒牧キャンパス・理事室
インタビュー
田村 遵一 附属病院長
インタビュアー
本多 悦子  理事(学長特命担当)
長安 めぐみ  男女共同参画推進室副室長

病院における男女共同参画の現状

本多:よろしくお願いいたします。最初に病院における男女共同参画の現状について、教えてください。

田村:病院は他の学部と違って、特殊な面があると思います。他の学部は事務系と教員が主だと思いますが、病院は医療職が多いですね。例えば看護師は歴史的に断然女性が多い職業です。医師は男性が多い。ただ、最近は、医学部の教授は全員男性なのですが、准教授以下は女性も多くなりつつあります。看護職も男性が増えており、看護師長クラスも何人かおります。そういう意味で、同じ立場の共同参画というのが少しずつ進んできていると思います。これからは意思決定するところに、具体的には「教授」ですね、女性が是非入って欲しいと思っております。

医学分野でのジェンダーバランスについて

田村:どちらかというと、個人差はありますが、女性の方が適しているかな、と思う場面もありますね。例えば、病院内では、医療倫理とか安全とか、教育とか、そういう横軸の職種が増えてきております。特に他職種、チーム医療は女性の方がきちんとやってくれるような気がしますね。また、看護師も、力仕事とか、救急とか、災害医療など、男性が頼りになる場面も多くあります。そういった意味で、附属病院は男女で競争するので無く、お互いに総合的にやるべきだと思います。繰り返しになりますが、男女を同じ物差しで測っているからおかしくなるのであって、女性の方がこの分野は得意という面を活かしていくのが良いと思います。

医師としての妻との関係から

本多:男女共同参画についてのエピソードとかありましたら…。

田村:実は、自分の妻も医師をしておりまして、実家が近くなので、子どもを見てもらったりしていました。患者さんの身になって考えるのは、私より家内の方がずっと強いですね。女性は身近なところに気を配って子どもや患者さんをしっかりみる、というのは、役割というよりは自然発生的能力なのかなと思います。

長安:親身になってくれる良い先生という所もありますよね。

田村:でも、概して、女性は結構深刻になりすぎてしまうこともありますね。患者さんとトラブルになって、自分が悪かったのかなとずっと考えてしまうこともあるようで。その辺は、女性もあるときは少し無理をしてでも、客観的に観るようにしないと自分が大変になってしまうのかなと思います。

長安:そういう判断は経験が必要ですよね。

田村:女性でまじめな人ほど、深刻にとらえている感じがしますので、そう考えると、大変なというか、様々な場面を経験していただいた方が良いかと思います。それもあるので、なるべく女性に可能な限り委員会に出てもらうように進めています。現在、マネージャークラス、いわゆる医会長レベルだと、女性が3割くらいでしょうか。そういった人たちがこれから育ってくれると良いと思っています。

ブランクをどう考えるか

田村:子どもを出産するときには仕事を休みますよね。子どもが小さいうちは手がかかると思いますし。それを女性自身もブランクと考えている人が多いのですよ。今はないと思いますが、一昔前は「子育て中で昼間だけ働くのは一人前でないので採用できない」という所がありましたね。昼間だけでも働いてくれた分、その分男性も助かるわけで、頭を切り換えないといけませんね。なんとなく、女性にも負い目があるような感じがありましすね。もし、男性にそういわれたら、「じゃあおまえ子どもを産んでみろ」って言えば良い(笑)。

本多:出産や子育ての経験というのは経験値が増えたと言うことでプラスになると思うのですよね。

田村:全くその通りだと思います。女性に言いたいのは、休んで不利になるとか気後れした感じでやるではなくて、堂々と、「私は休んでいたけれど、その分、社会で大事な仕事をしたのよ」と、思って欲しいですね。諦めないで、勉強してリハビリして、またバリバリやっていただきたいですね。

これからの男女共同参画についての思い

本多:それでは、最後の質問ですが、病院に限らず群馬大学として、これから男女共同参画はどのようになっていくと良いか思いがありましたら教えていただきたいのですが。

田村:「男女共同参画」と言わなくても済むようになって欲しいですね。逆に当然という感じで、ごく自然に男女が半々くらいで、良いところをお互いに認め合って活かしていこうという様になって欲しいですね。男女は全く同じでは無いわけですから、男性の視点と女性の視点の両方があった方があらゆる組織で良いと思います。それにはやっぱり、当たり前として、女性の「~長」がでないと。男性と女性が一緒に考えて、「ここは私が得意だからやる」といったように、お互いに納得して上手く分担できるようになりたいですね。

本多・長安:ありがとうございました。