工藤:本日はお忙しいところありがとうございます。まず、最初に理工学府の男女共同参画の現状についてお話いただければと思います。
関:1つは女性教員を増やすということ。今年度、理工学府では女性限定公募を実施します。女性教員は全体像からすれば少ないかもしれないですが、少しずつ改善していくでしょう。研究助成で前学府長が研究費を配分しましたよね。
工藤:「まゆだまスタートアップ支援」ですね。新しく女性研究者を採用した学科と研究者個人にスタートアップ支援として配分しました。本当は男性のスタートアップだって必要だと思いますが、今、特に女性を増やしたいということで、インセンティブとして理工学府が始めました。
長安:今年からは、ダイバーの採択を受けたので、全学の学長裁量の経費の方から特に准教授・教授を女性限定で採用した場合、スタートアップの研究費を支給する計画ですと。それを魅力に思っていただいて、優秀な女性に来ていただけるようにと。群馬大学のインセンティブ策として『まゆだま加速プラン』を挙げております。
長安:学長裁量経費で計画を立てています。
長安:今年、29年度に着任された方から適用ということで。
長安:独自の委員会はやっぱり大きいのではないですかね。
関:トップは工藤先生でしたっけ?
工藤:はい。去年立ち上げて、作ったときにはまず前学府長にはご了解を得て。とにかく色々なイベントを大所帯でやるのは大変なので、やっぱり実働部隊として活動していただいています。
関:どのくらいやっています?
工藤:今は今度2回目をやるって感じで。あとはメールで。
関:じゃあ、2~3ヵ月に1回とかっていう感じですかね。
工藤:そうですね。必要に応じてですね、今のところ。これからJSTの採択もあり、色々なイベントがあるので今度は9月1日に予定しています。その時に委員会では今後どの様に活動していくかということなど、今後の在り方についても議論したいと思っています。まあ、実際にイベントをやっていくのだけでも大変ですが。他にできることがあれば、先生ともご相談しながら委員会の方向性を決めたいと思っています。
関:そうですね。一時的なイベントというか、周知するのは重要とは思いますが、何か恒常的に困っていることが解決されていくことが重要だと思うので。サポート支援とか男女共同参画推進室で検討されている案を上手く運用していくことがきっと重要なのですよね。本当に何かニーズなのか僕はよく理解できていないのですが。
工藤:活動が色々な面に渡っているのでなかなか難しいのですが。人事権はトップなので、それ以外の土壌を作っていくというか。色々なことが各学科レベルで浸透していくというか。上からのトップダウンだと部門長は分かっているけれども、それ以外の人にはなかなか伝わり難い。もちろん周知はメールなどでしていますが、なかなか浸透していかないということで。それを各学科から委員に折角出ていただいているので、もう少し広がったらといいと思います。
関:やっぱり女性教員が少ないので、女性教員だけに関係するっていう感じで、学科ではあまり話題になっていないという認識がありますね。本当は違うのかもしれませんけれども。でも、大学ってあまり性別に依存しない生活を普段はしているので、基本的にはあまり関係ないというか。男だから女だからって何かするのは行事のときの宿泊体制の時ぐらいで、特に話題にならない。「今回の学生たちは女の子がいるから女性教員にも来てもらわないと大変だな」とか。そういう感じが出てくることはもちろんありますが。それ以外に女性だから云々ということはあまり議論したことがない。
工藤:私もずっとそうでしたけれども、これは国の政策といいますか、女性教員を増やすということとなれば、それを意識的にやって行かざるを得ないところがあります。だけど、男性が多い理工学府で女性教員・女子学生ってあまり声高に言ってもピンと来ない人がほとんどだし、かえって反感を招くということもあるので、やっぱり難しいなとは思います。
関:アファーマティブアクションじゃないですけれども(笑)。
工藤:男女共同参画で女性を支援することによって、男性の支援につながる。男性にもメリットがあるのは実際そうだと思います。
長安:そうですね。ライフイベントを抱えている人自体の支援があまり皆さんの中に共通理解がないので、やっぱりそれを意識的にやっていくことで、もしかすると介護を抱えている男性の教職員の方が働きやすい職場になるかもしれない。それこそ、先ほどおっしゃっていた女子学生の育成みたいなところになりましたら、生き残りも含めて女子学生が活躍できる環境を作っていくことが求められている。「まゆだまプラン」でも、大学院進学の取組についてはとても評価が高かったところですね。
関:ロールモデルを適切に示すとかそういう行事とかは重要だと思います。何か女子学生、本人がまずは「女の子だから」って考える子が多いような気がします。
長安:そうなのですね。意外と。
関:結構意識として自己限定している部分っていうのがあるのかもしれませんね。特に、群馬大学で割合優秀な女の子の層っていうのは、親元で通わせたいという親の強い意志でここに来ているっていうシチュエーションもあると思いますので。そういうシチュエーションだと、そのまま仕事に対する考え方もその法則の元で決定されていく。あるいは大学院進学とかに関してもそういう恐れがあるような気がします。そういう意識っていうのを少しもっと自由にしていくという考え方は必要だと思います。
工藤:女子学生の意識ですよね。
長安:オープンキャンパスもそうですよね。前提として大学院進学があるのですよっていうのを見せながら、キャンパスの見学のときも、意識しながらやってきたと思います。
工藤:親御さんも含めてですね。
関:そうですね。
工藤:保護者の意向がかなり強く働くので。そういうことも含めて両立支援アドバイザーの中村さんに来ていただいて、学生さんにもこれからの進路に関するアドバイスをしていただいています。桐生キャンパスは木曜日ですね。もちろん男性のイクメンに関するアドバイスもできるし中村さんは色々なことに対応できるので、上手くまゆだま広場を使っていただければ良いかなと思っています。
長安:環境と意識啓発とを両方をやっていかなければならないということですね。
関:やっぱり適切なロールモデルをみんなに知ってもらうとか。女の子だからいいやと思っている人はそういう行事には来ないような感じはあるので。
工藤:各部門の委員の方にそれぞれの部門から多くの人のイベントへの参加を促していただきたい。色々な周知は勿論こちらでしますけれども。
関:多分メールでピンポイントで周知をするみたいなことがあると良いのかもしれません。
工藤:女子学生だけに周知はしているとは思いますけれども。
指導教員の先生だとか学科の先生方から行ったらいいよと言ってもらうのも良いですね。
関:あるいは女の子だけ集めようと思わずに、男の子も一緒に来てもらうっていうアイディアもあるかもしれないですけどね。
工藤:女子学生って限定しても男子が来ていることもありますし(笑)。それは別に構わないのですけれども。男子が聞いても面白い話だと思いますよ。
工藤:では次に、関先生ご自身のご家庭ですとか、今までの男女共同参画に関するトピックスやお考えなどあればお聞かせください。
関:え~と、家族構成は妻と子どもが3人。男・女・男っていう順番で全員大学に通っています。みんな理系で。う~ん、男女共同参画…あまりイクメンではなかったかもしれないですね。大学に滞在している時間が長くて。
工藤:子育てはお任せって感じですか。
関:一応、専業主婦なので。子どもが産まれてから専業主婦になったと言った方が良いのかな。なのでお任せ状態で。休日に赤ちゃん専門店まで車を運転するとかはしていたけれども。ご飯のあとに洗い物をするとかそれぐらいで。
長安:すばらしい。
関:洗い物は酔っ払っているとやらないけれども(笑)。
工藤・長安:ははは(笑)。
工藤:何かリクエストとかはなかったですか、子育て中、赤ちゃんだった頃とか。
関:まぁ家にいれば適当に。3人もいると関わらないわけにはいかない。
工藤・長安:ははは(笑)。
関:だからどこか行かなくてはならないのだけれども、「ここは見ていて」っていうのはありますよね。1人の時は、紐付けて歩いた時もありましたよ。どっか行っちゃうので(笑)。
工藤・長安:ははは(笑)。
工藤:歳が近くていらっしゃるから本当に大変ですよね。
関:そうですね。結構苦労をかけただろうと今になると思いますけれども(笑)。
長安:子どもさんから見たお父さん像ってどんなですか。何か言われることありますか。特に真ん中の娘さん。
関:特に改まって意見聴取をしたことはないのですが…(笑)。
工藤:意見聴取(笑)。
関:みんな家から出て行ってしまっているので。
工藤:じゃあ今はお二人で。
関:そうですね。北海道と東京と大阪でみんなばらばらに下宿してくださっているので。
長安:大変だぁ(笑)。遠距離家族ですね。
工藤:先生のご専門の分野での女性研究者の状況はどんな感じでしょうか。
情報部門でよろしいのですよね。
関:情報部門なのですが、私はデータ解析が専門なのでどちらかというと統計学か経営工学が専門分野ということになります。
工藤:数学も被りますか。
関:統計学の中に数学もありますが、僕自身は今はしていないですね。経営工学関係は男社会なので女性は少ない。元々は企業人のやっていることを工学的に処理するということで。企業関係っていうのは男社会でしたから。統計学の方は割合女性に理解があって。例えば、学会を開催すると会場に託児所を作るのですよ。若い女性の研究者も学会に子連れで来られるようになっている。
長安:良いですね。
工藤:大体どの学会でもそんな感じで増えていますね。昔はなかったですけれども。統計学の方では女性がいることが普通の光景ということですかね。
関:そうですね。ただやっぱり男の人の方が学会では多いです、圧倒的に。
長安:これから変わっていきますかね、そういうバランスっていうのは。
関:増えていくとは思いますが。劇的にすぐ変わるかな…。女性が研究者を目指す条件っていうのは改善するのが良いのですけれども。どうすると改善するのか。研究者は、良いですけれどもね。女性がライフイベントとか割合避けて通れるじゃないですか。
工藤:割と、自由度が高いですよね。
関:例えば講義を1年間休むっていっても不可能ではない。全部集めてやるとか。必修科目とかを持っていると厳しいですけれども。
工藤:まぁ、だけれども大体の人はね。
関:だから出産とかは避けやすいと思いますし。どこにいても仕事はしやすい。実験系は大変ですけれども。
工藤:そうですね。
関:ペーパーワークならばどこでもできる。まぁ、子どもをあやしながらは、難しそうだけれども(笑)。
工藤・長安:ははは(笑)。
関:やっぱり集中する必要があるので(笑)。
工藤:そうですね。単純作業とか、データ整理とか。そういうのは、今は研究活動支援制度で支援者を付けて、その人にやってもらうという手もあります。
長安:話は変わりますが、若い女性の助教の先生方がぐっと増えましたので、これからまた出産ラッシュみたいなものが来るかもしれないですね。
工藤:情報の方はそんなには増えていないですが。
関:情報系とか最も女性が活躍できそうな学問領域ではあるのですけれどもね。
工藤:理工の中では化学に次いで、そんな風に見えますけれどもね。
関:ただ、現状では数学が基礎なので、女性って数学嫌いな場合が間々ありますよね、
工藤:いや、数学者は、立派な女性研究者いますよ。
関:いや、それはあの、いますけれども(笑)。
長安:ははは(笑)。
関:数学好きでした?
長安:う~ん、私はどちらかというと社会科学系なので。必要な学問だとつくづく思っています。今になって。
関:女子校とかでも物理を選択する人は結構少なかったりしますよね。
工藤:そうですね。
関:そういうのをまず板橋先生に頑張っていただいて改善していかないと。
長安:今頑張っているとこですよね。理工も「女子中高生の理工進路選択プログラム」の外部資金を取って。
関:板橋先生が講演すると理系選択が増えるという話なので。
工藤・長安:ふふふ(笑)。
関:目立って増えるという話で(笑)。
工藤・長安:ははは(笑)。
工藤:板橋先生の講演は、特別すごいみたいですね。保護者にも人気があるという話を高校の先生がおしゃっていたので。
長安:伝道師のような方は大切ですね。
工藤:まずは入っていただいて。こんなはずじゃなかったこともあるけれども、入って良かったという人も結構多いと思うので。
工藤:最後にこれからの本学の男女共同参画についてどういう方向に進んでいったら良いと思いますか。先生の個人的な意見で結構ですけれども。
関:男性と女性って同じではないと思うので。というか、1人1人見れば個性がありますが、個性の幅の方が大きいかもしれませんが平均値が違う。やっぱり女性の方が知的な部分で言うと広くものを見て、色々なことに配慮するのが得意だと思います。例えば、細かい話ですけれども、薬箱の中に山ほどの薬がガチャガチャに入っちゃったりしているのですけれども、私は見つけられないのですよ、爪切りとか。妻が来るとすっと取り上げたりするので、あれがどうしてできるのか、僕は不思議なのですけれども。何か物を持っていると荷物を男の子は必ず忘れる。すぐ忘れるのですよ、何か気が散ると。うちの妻も娘もそうですけれども、いくつか荷物があっても全部、例えばいっぺん座って置くと男の子はもう視野の外に行ってしまうのですけれども、(女性は)ちゃんと持って歩いていける。だから、注意を払って全般的にバランスを取っていくという能力があると思うので。逆に、男の子の方がまぁ集中していると言えば良いですが、何に集中するかが問題ですけれども。
長安:うんうん。
関:そういう意味で狙ったものに対して集中的に考えるのは男の子が得意なのかなと。まぁそういうような個性と特徴を活かして色々研究活動をできれば。両方とも必要だと思うのですが。男女共同参画ですよね?
工藤:そうです。
関:無理に同じことをやれって言っても無理だと思うので、そういう意味でそれぞれの良いところを活かせるような環境とか。だから研究テーマの選び方も、別に性別に関係ないかもしれないけれども、場合によるとそういう良い点を引き出せるようなテーマを考えてもらうということもあるかもしれない。そういう意味で、それぞれ自分でないとできないような研究を上手にやっていってもらうことがすごく重要だと思いますね。だから、女の子だから、男の子だからっていうことはないですけれども、それにしても、特徴を上手に自己認識して、得意でないところは誰かにサポートしてもらって、上手く共同体制をとってもらえれば上手くいくのではないかと思います。
工藤:研究もそうだし、大学も良い方向に進ませていくという、先生は指導的な立場のお一人なのでそういう業務的なこともですよね。
関:今、工藤先生以外あまりマネジメントに関与していただいていないですね。教授ってお二人ですっけ?
工藤:そうなのです。だから少ないのですよ。
関:もっとたくさんになってもらわないと本当はいけないのだけれども。ただ、女の人だから教授に昇格させるという訳にはなかなかいかない。
工藤:そうですよね。
関:(笑)。
工藤:もちろんです。そこは平等じゃないといけないので。
関:そうですよね。
工藤:だからまずは駒が少ないというか、人が少ないので准教授がまず少ないという。
関:准教授はお一人ですね。
長安:准教授層が厚くならないと…。
工藤:そう、厚くならないと上になれないので。これから新しく准教授も来られるかもしれないのですが。そうして大学の重要な意思決定機関に加わる女性が増えたらバラエティが出て、役割分担ができて気が付くところが違うので、ダイバーシティが実現するかなと思っています。
関:大体女性がいることを忘れてしまうパターンが多いですからね、放って置くと。
工藤:(笑)。そうかもしれません。
関:男社会になってしまっているので。最初に言ったように、女性だから特別に何か考えなくてはいけないことは、大学の世界だと普通は多くはないかもしれないですけれども。何かポコって抜けていることは時々あるかもしれない。
長安:色々な立場の人がいるのですよっていうことを知ってもらうためにも。例えば、LGBTのことそうかもしれないですけれどもね。色々な多様な人がいるのだねっていう理解が大事ですよね。男性でも色々な事情を抱えた方がいますしね。
関:そうですね。
工藤:それと留学生や外国の方。
長安:そうですね。障がいのある方も含めて。
工藤・長安:本日はありがとうございました。
関:ありがとうございました。